tacassi noob!

穴掘り人の譬え話。
穴掘り人がいる。彼の仕事は地面に穴を掘ること。その穴が何に使われるのか、誰がその穴を埋めるのかは、彼の関心の埒外。ただひたすらに、平らな地面を見つけたら、そこに穴を掘る。
誰かさんは「こんなところに穴があっては危ないな」と、その掘られた穴を埋め戻す。しかし穴掘り人は「もともと平らな地面なんだから、穴を埋め戻したくらいで自慢にはならない。地面は平らで当たり前だ」と言う。そもそも穴の埋戻しには関心がない。自分の存在意義は穴を掘ることだから。
最初は穴を埋め戻していた誰かさんも、埋め戻すだけ徒労を土とともに積み重ねるだけだと気づき、やがて穴を放っておくようになる。穴を埋めたところで誰もほめてくれないし、埋め戻したところで、そのあいだに新たな穴が出来ている。ときには埋め戻したところすら再び穴が掘られていたりする。ハッと気づけば自分も穴を掘っていることがある。
やがて誰かさんにとって穴だらけの世界が広がっている光景は一種スリリングで、ときに興奮を感じることもあるようになる。「何もしなくて世界はスリルに満ちているじゃないか」。地面の上に高楼を築こうとしていたことを、誰かさんは既に忘れている。
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